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なぜ年齢とともに前歯の歯並びがガタガタに?

今回は歯並びについてお話ししたいと思います。

私自身も経験しているのですが、年齢とともに前歯(特に下の前歯)がガタガタに乱れてくる方がいます。

考えられる原因

『奥歯の咬合(こうごう)・嚙(か)み合わせ』

本来奥歯をしっかり噛み合わせた時、前歯はしっかりとは当たらず、薄い紙が一枚スッと抜けるくらいの隙間が空いているのです。この隙間を作ってくれるのが奥歯の噛み合わせです。奥歯の噛み合わせが良好な状態であれば、前歯は強く当たらないのですが、年齢とともに奥歯がすり減ってしまったり、もともと奥歯が内側に倒れていたのがさらに倒れこんでしまったりして、奥歯の噛み合わせが本来より低くなってしまうと次第に前歯が強く当たるようになってしまいます。前歯が強く押されるようになり、前歯が内側に押し込まれ、その結果次第に乱れてきてしまいます。

歯が『すり減る』ことを『咬耗(こうもう)』や『摩耗(まもう)』と言います。

歯は日常の食生活でもある程度『すり減り』ますが、最近はストレス社会で『歯ぎしり』や『食いしばり』をされている方が多いです。本来上下の歯が接触するのはお食事の時だけで、時間にして食事の時間を含めても24時間で15分~20分程度が正常とされています。ところが、日中食いしばりながら仕事や家事を行っていたり、就寝中に『歯ぎしり』をしていると歯が異常にすり減ってしまいます。特に就寝中は無意識なのでかなり厄介です。この異常な『すり減り』により奥歯の噛み合わせが悪くなっていきます。

筋肉は伸び切った状態だとあまり力を発揮できないのですが、少し収縮(縮む)するとより力が入りやすくなります。奥歯の噛み合わせが低くなると噛む筋肉は収縮しますので、より強大な力が発揮され歯が『すり減る』リスクが高くなってしまうのです。

さらに前歯が強く当たると、『下顎(かがく・したのあご)』は奥に引かれてしまい耳の前にある顎の関節である『顎関節(がくかんせつ)』に負担がかかり、『顎関節症(がくかんせつしょう)』や『偏頭痛(へんずつう)』の原因となる可能性があります。『顎関節』の後方には『浅側頭動脈(せんそくとうどうみゃく)』や『耳介側頭神経(じかいそくとうしんけい)』があり、下顎が奥に引かれることによりこれらを圧迫することにより『片頭痛』を引き起こすことがあるのです。

このように奥歯の噛み合わせが乱れると悪循環が生じます。

『親知らず(智歯(ちし))の存在』

現代人は『顎(あご)』が小さいと言われていますので、なかなか親知らずが綺麗に並んでいる方はいません。小さい顎の中に無理やり親知らずが萌出(ほうしゅつ)するとことで、奥歯が前方に押され前歯にもしわ寄せが起こってしまいます。因みに萌出とは歯が生えることです。また、親知らずの萌出により奥歯の嚙み合わせが乱れることで前述したように前歯の乱れにつながっていきます。

『骨の萎縮(いしゅく)』

年齢とともに身長が縮んでしまうように、骨が萎縮してしまいます。基本的に歯の大きさは変わりませんので並ぶ場所が足りなくなることで歯並びの乱れにつながることが考えられます。

治療方法

歯並びや噛み合わせの乱れが原因となっていることが多いので、根本的には『歯列矯正(しれつきょうせい)』が必要になります。ただ、原因の除去が重要ですので、『食いしばり』や『歯ぎしり』の自覚があるようであれば、日中意識があるときは『上下のはが接触しないことを意識する』や就寝中に『マウスピース』を装着し、上下の歯が直接接触しないようにすることも有効だと考えています。

『親知らず』が原因となることも多いので早期の抜歯(ばっし)が望ましいと考えています。骨に埋まっている抜歯は抜歯後に痛みや腫(は)れ伴うことが多いですが、若い方が抜歯後の治癒が早いことが期待できますので、可能であれば早期の抜歯を推奨します。

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